My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「───…」
「ぁ」
柔らかく温かな微睡の中。
意識を浮上させた神田の目に映ったのは、ぼんやりと焦点を合わす雪の姿だった。
見下ろしてくる顔が、微かに綻ぶ。
「起きた?」
「……寝てたのか」
「うん、少しだけね。お酒沢山飲んだから、眠気がきたんだよ。きっと」
見下ろし微笑む雪の手が、優しく神田の髪を撫でる。
後頭部には柔らかな感触。
それは以前も身に覚えがあった。
どうやら雪の胸に顔を埋めたまま、寝落ちてしまったらしく。
そうしていつの間にか、彼女の膝を枕に借りていたらしい。
「どれくらい寝てた」
「んー…一時間くらい?」
「そんなに寝てたのか」
「大した時間じゃないよ。飽きずにユウの寝顔見てられたし」
「…ずっと見てたのかよ」
「うん」
にっこり笑って頷く雪は、言葉通り飽きずに寝顔を見ていたようだ。
「ユウの寝顔って、ここに皺が寄らないから。なんだか年相応に見えて、可愛く映る」
「………」
「ほらそれ。そうやってすぐに眉間に皺寄せるから、周りにユウの怖い顔が定着しちゃってるんだって」
「可愛いなんざ褒め言葉じゃねぇだろ」
「そうかな?私にとっては最上級の褒め言葉だけど」
「なんでだよ」
「だってそんな感覚をユウに持てることが、奇跡みたいなものだから」
くっきりと眉間に刻まれた皺を、雪の指先が優しく撫でる。
心を寄せ合う前は、可愛らしさなど神田に一度も感じたことはない。
暴君鬼神破壊者のようなイメージは、体に受けた拳の痛みと共に雪に染み付いている。
故に、心を寄せ合った後も、早々その感覚は取れなかった。
だからこそ雪にとっては奇跡のようなものなのだ。
可愛らしいと思えるだけ、彼を見る目が変わったのだと。
そうして愛でられるだけ、深い愛情を抱えられるようになったのだと。
身を持って実感できるから。
「喜ばなくたっていいから、怖い顔しないでよ。私は褒めてるんだから」
「………」
笑って覗き込んでくる雪の顔をじっと見上げたまま、やがて神田は小さく溜息をついた。
渋々でも折れたのは、惚れた弱味か。