My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「…ユウ?」
「少しこのままでいたい」
「……ん」
雪の胸に顔を埋めるようにして、抱き締めてくる。
抱き締めると言うより、縋るような神田の抱擁に雪はそっと腕を回した。
サラリと長い髪を撫でながら優しく囲うように。
微かな息遣いを肌に感じつつ、口元を緩めた。
生い立ちがどうであれ、神田は生きているのだ。
セカンドエクソシストである以前に、愛すべき人として。
(───愛してる)
その言葉は胸の内だけで囁いて、雪は流れるような漆黒の髪に顔を埋めた。
鋭い嗅覚に充満する、神田の匂い。
そこに蓮の花の匂いなどしない。
情事後の発する汗の匂いと雄の匂い。
しかしそれが酷く愛しい匂いに感じた。
今は何か言葉で思いを伝えることよりも、何も隔たりのない肌で触れていたい。
感じていたい。
それが何よりも大切なことに思えたから。
柔らかな二つの胸の間に顔を埋めて、神田は深く息を吸い込んだ。
感じるものは頭を優しく撫ぜる手と、甘い抱擁の腕と、とくりとくりと刻む雪の心音。
命の音だ。
───生きている。
自分も雪も、人として生きているのだ。
「………」
そっと目を閉じる。
視界を埋め尽くす真っ暗闇。
しかし完全なる闇ではない。
微かに光を感じる瞼の裏側。
それは死にゆく記憶の塗り潰しとは違う。
彼女の傍には、いつも心地良い闇があった。