My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「……今も見えてる?」
そう、と。
伺うように問い掛けてくる。
雪の配慮が混じっているのだろう、その言葉に神田は、ああとだけ素っ気なく返した。
やがて雪の目が辺りを探るように彷徨う。
きょろきょろと見渡す挙動不審な動作に、神田は眉を潜めた。
「何してんだ」
「どんなふうに見えてるのかなって。ユウが見てる記憶の世界。…花が舞ってるの?」
「どんな想像してるかしんねぇが、綺麗なもんじゃねぇよ」
人によっては絶景だと謳うかもしれない。
一面の花畑を好んでいたティエドールなら、もしかしたら。
しかし神田にとって足元をも埋め尽くすような蓮華の数々は、壮観なものとして映ってはいなかった。
焦がれる思いを焚き付ける、それだけのものだ。
忘れるな、と言うかのように。
思い出せ、と言うかのように。
「これは俺を縛ってるもんだ。見方によっちゃ呪縛だろ」
真っ青な空。
儚く笑うあの人の姿。
散りゆく白い花弁の合間で、ボロボロの手を伸ばした。
そこには脳が死ぬ間際の記憶もあった。
AKUMAの拳が視界一面に振り下ろされ、真っ暗闇に塗り潰される記憶。
淡く儚い優しい思い出などではない。
これは神田を生前へと縛り付けているものだ。
「呪縛か……じゃあユウは人間だってことだね」
「あ?なんでそうなる」
しかし返ってきたのは、笑顔だった。
更に眉を潜める神田に、雪は少しだけ目尻を下げて笑う。
「呪いを受けるのは人間だけだって、前にコムイ室長が言ってたの。過ちを犯すのも罪を背負うのも、それが人だから。その記憶の花は、ユウが人間だって証だね」
「………お前」
肯定でも否定でもない。
しかしそれは神田が人間である証だと彼女は言う。
「………」
無言のまま、雪を抱く腕に力を込めた。
言葉にならない感情が湧き出たらしい。
じりじりと胸の奥が焦げ付く。
締め付けられるような感覚の中に混じる、温かくそして熱いもの。
まるで初めて雪への好意を錯覚した時のようだった。