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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「そうだよね…」



淡い朧気な記憶。
それは記憶の隅に垣間見た金色(こんじき)の麦畑のような、眩しい世界。

顔も声色もよく憶えていない。
しかし幼い体を抱いてくれた、温かい腕は憶えている。
いつか家族で暮らそうと約束してくれた、優しい口元は憶えている。

あれは確かにエクソシストとサポーターである父と母の姿だった。
二人から離れるのを嫌がっていた自分は、紛れもなく二人の子だ。



(そうだよね?)



そう、心の内で自分自身に問い掛ける。
答えなど返ってこないことはわかっていた。
それはまるで、自身に言い聞かせるかのように。



「………」



腕の中で黙り込んでしまった雪を見つめる神田の眉間に、更に皺が寄った。

東洋人独特の、雪の暗い瞳。
どう見ても欧米の異邦人には見えない瞳に、影が差しているように見えたからだ。



「国籍なんて身分証明に必要なだけだろ。そんなに大事なもんか」



ぼそりと素っ気無く告げられた神田の声に、雪の意識が向く。

神田には国籍など存在しない。
教団に入団する際に身分証として、偽造国籍を作ったまでだ。
人造使徒として作られた神田の体は、普通の人間とは異なるもの。
どの血が混じっていて国籍が何処かなんて、それ以前の問題だ。



「大事かどうかは…人それぞれかもね。私にはほとんど面識ない両親と繋がっていられる証のようなものだから、どうでもいい訳じゃないよ」



言葉を選ぶようにして、控えめに雪は笑った。
神田の言いたいことはわかるし、その気持ちも汲み取りたい。
しかし自分の中には別の思いも存在して、月城雪として成り立っている。
彼の言葉全てに肯定できる訳ではない。

それぞれに思いがあって、それぞれに生きてきた道がある。
だからこそ雪にも神田にも自分の意志が在るのだ。



「でも、ユウの言う通り。ユウが何処の国の出だって、国籍が無くたって。ユウがユウなら、私にも関係ないかな」



そこは同じ、と言って触れるようなキスを一つ。
ゆっくりと顔を離しながらヘラと笑う雪に、やっと神田は眉間の力を抜いた。

それぞれに思いはある。
しかし歩み寄ることもできる。
それが人というものだ。

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