My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「相変わらず綺麗な髪だね……憎たらしい」
「オイ」
「嘘、状態だよ」
軽く笑いながら、緩んだ髪紐を解いてたっぷりと手に余る黒髪を指で梳いていく。
見たことはないが、神田は常日頃から浴場で石鹸一つでゴシゴシと遠慮無く髪を洗っているのだと、ラビから聞いたことがある。
それを男らしさと勘違いして真似たティモシーが、次の日に髪をギシギシにさせ悲鳴を上げていたからだ。
何故神田の髪はティモシーと同じように傷まないのか。
その理由は、漠然とだが雪はなんとなく悟っていた。
(第二使徒の体だから、だろうなぁ)
治癒力の高い体だからこそ、この見事な美髪は保たれているのだろう。
手梳きで整え、長い髪をまとめていく。
楽しそうにするものだから、そんな雪を目の端で捉えつつ神田も好きにさせてやることにした。
誰かに髪を梳いてもらった記憶などないが、それは確かに心地良いと思えるものだ。
「できた♪」
「……………オイ待て」
が。
身を任せていれば、いつの間にか見事な編み込みができあがってしまっていた。
長い髪を編み込み一つにまとめて髪紐でリボンを作れば、まるで女性のよう。
「やっぱり似合うね。前に一度してみたいなー、とは思ってたけど」
「遊んでんじゃねぇよ。俺は人形か」
「リカちゃん人形とかね、女の子好きだよね」
「知るかんなもん。いいから解け」
「えー」
「えーじゃねぇ」
「あー」
「あーじゃねぇ!遊ぶな俺で!」
「わっ」
ぐしゃぐしゃと大きな神田の手が、雪の髪を乱雑に掻き乱す。
「やるなら自分の髪でやれっ」
「わ、ちょ…ッ私はいいよっ」
「なんでだよ、女なら好きなんだろそういうこと」
「それはまぁ…そうかもね?」
「なんで疑問形なんだよ」
「だって私、リカちゃん人形で遊んだ経験なんてないし」
「女はそれ好きなんじゃなかったのかよ。適当なこと言ってんな」
「適当じゃないよ。だってそう聞いて───」
"女子ってこういうもん好きだろ?"
(…あれ…?誰に聞いたんだっけ…)
くしゃりと、少しだけ雑に頭を撫でる大きな手。
見下ろしてくる顔は朧気で鮮明さはない。
しかし口元は確かに微笑んでいた。
あれは、誰か。