My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「………ユウ?」
触れるだけのキス。
ゆっくりと顔を離す神田の目に映ったのは、不思議そうに見返してくる雪の顔。
当たり前に腕の中にいて、当たり前に触れることができる。
その当たり前のことをアルマと重ね切望していたのだろう、神田に雪は云ったのだ。
自分は大丈夫だから、ぶつかってこいと。
ノアと判断を下され首輪を嵌められた彼女の方が、本来なら余裕もないはずなのに。
神田の心を軽くしたのは、確かに雪の言葉だった。
(……こういう所は、本当敵わねぇな)
神田の心が読み取れている訳でもないだろう。
なのに心を止めるような言動を度々雪はする。
雪の言葉だから心に留まるのか、定かではないが疑問に思うことはしなかった。
神田にとって、考えるだけ野暮なことだ。
「どうしたの?怒ったりキスしたり…いつもより感情の揺れが激しい…」
「悪いか」
「ううん、悪くはないけど」
「ならいいだろ」
即答して首を振る雪の体を抱き竦めて、柔らかな抱擁に似た感覚に浸る。
「お前だって同じだろうが。阿呆面したり照れたり忙しい奴だな」
「えっ」
ぎくりと固まる獣耳と尾。
わかり易い感情表現だと笑うのを耐えて、神田はぴんっと柔らかな獣耳を軽く指で弾いた。
「お前のことだから、それくらいわかる。嬉しいなら嬉しいって素直に言え」
「っ…吃驚しただけだよ…そういうこと、まさかユウが言うなんて」
大事だから守りたいなどと、頼って欲しいなどと。
昔の神田なら、絶対に言わなかったであろう言葉。
その思いが真っ直ぐ雪へと向けられているのがわかるから、余計に照れるのだ。
そして心を包むは幸福感。
(尻尾が揺れてんぞ。って言ったらまた照れんだろうな…)
吃驚しただけ、と言いながら彼女の背後で軽くゆらゆらと揺れる尾。
喜びの感情を目でしかと確認しながら、偶には見逃す優しさも持つの大事だと以前雪に言われたことを思い出し、神田は言葉を呑み込んだ。
充分感情の起伏は見て取れている。
偶には受け流してやってもいいだろう。