My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
顔を上げる。
ようやく向けられた金瞳を見返せば、そこには小さな溜息をつく雪がいた。
「ここまでして、今更悪気なんて感じないでよ」
大体いつもはスパスパ頭叩く癖に、と言われれば何も言い返せない。
黙り込む神田に、雪の片手が神田の手に添えられる。
指を絡めて繋いだ手は、ゆっくりと胸元に引き寄せられた。
「ユウもちゃんと聞いてきたし、私はいいって言ったでしょ」
「……そんな会話してねぇぞ」
「喩えだよ、喩え。…それっぽい会話はしたでしょ」
食ってもいいかと尋ねた神田に、雪は抵抗を見せなかった。
照れ臭そうに呟く雪は、そのことを言っているのだろう。
「これでも鍛えてるし、流血なんて慣れてるし。私は病弱女子でも、か弱き乙女でもないし。…大事に思ってくれるのは…嬉しい、けど。でも、多少傷付けたくらいで参ったりなんてしないから。よく私の頭叩いてきたユウなら、わかるでしょ」
「頭叩くのと血を流させるのとじゃ、訳が違うだろ」
「ユウに叩かれて出血したことなんて、一度や二度じゃないけど」
「………」
「だから今更だよ」
一体どれ程の暴挙を過去、雪に向けてきたというのか。
今更ながらに己の愚行を必死で思い出しながら気まずさに黙り込む神田に、雪はくすりと笑った。
「んで笑ってんだ」
「や。なんか可愛いなぁと」
「なんだそれ。馬鹿にしてんのか」
「してないよ。だから眉間の皺増やさないで、ほら」
むすりと寄せられる神田の眉間の皺を、雪の指先が触れて微かに撫でる。
神田が顔を渋めれば、鬼を見たような顔で逃げ出そうと顔を背けてばかりいた雪。
いつからこうして、笑ってくれるようになったのか。
まじまじと目を向ける間に、神田の眉間からは自然と力が抜けていた。
「だからね。そんなに構えなくたっていいよ」
「……(構える?)」
とは、なんのことか。
言葉を理解できずにいる神田に、振り返ったまま雪は優しい笑みを浮かべた。
「私は早々潰れたりなんてしないから。ぶつかってきても、大丈夫」
さらりと告げられた言葉に、深い意味などあったのか。
わからないが、そこで神田は言葉を失った。