My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
暫く薬と睨み合いっこをした後、無視できない体の痛みに意を決して、水差しの水を空のコップに注いだ。
ごくりと唾を呑み込む。
恐る恐る袋から取り出したカプセル薬を、口の中に差し入れた。
「なんだ…っ? 止まれそこ!」
「面会の許可は受けてないぞ! 止まらんかンぐほっ!?」
「な、なんつーことを…ヒィっ! こっち来んな!」
…?
コップの水を急いで口に流し込もうとすれば、僅かに開いた小窓の隙間から、悲鳴のような複数の声が聞こえてきた。
恐らく警護班の人達の声。
なんだろう?
「お前…っこんなことしてタダで済むと思うなよ…!」
「鬼だコイツ! 鬼がいる…ッ!」
……あれ、なんだろう。
何処かで聞いたことあるような切なる悲鳴だな…。
僅かな小窓の隙間から差し込んでいる、地下通路の光。
何か騒動が起きているのか、そこに影が幾つも入り込んできては消えていく。
まるで小窓の前に誰かが立ち塞いでは、離れていくかのように。
……え、なんだろう。
なんだかとってもデジャヴ。
あれは確か…パリ警察署の独房で似たような騒動が──…いやいや。あれ、ルパンだったし。
あの暴君様かと思えば、見事に変装した大泥棒だったし。
ルパンがこんな所にいる訳がない。
デジャヴなんてある訳ない。
それより口の中に入れたままのカプセルが、唾液で溶けてふやけてくる。
中身が出てくれば嘔吐感が増すかもしれない。
その前に水で流し込もう。
と、口を付けたコップを大きく傾けた。
「邪魔だ退け」
「ぶっふぅッ」
瞬間、噴き出した。
あまりに聞き覚えのある声と台詞を耳にして。