My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
口角を上げて笑うだけでも、焼かれた肌が引き攣って地味に痛む。
なんだか虚しさだけが増して、笑い声は止めた。
机に目を向ければ、手付かずの痛み止めの薬が見える。
…今は…飲めるかな…。
「……」
だけど私の手が伸びたのは薬じゃなく、握っていた赤いリボン。
両手で形を崩さないように握って見つめる。
…ロード…確か、ずっとはいられないって言ってた。
あの謎の縫いぐるみの正体は掴めず終いだったけど、今の私には唯一の拠り所だったから…
「…ロード…」
寂しい。
本当に消えてしまったんだ。
幼い少女みたいな声をしていたのに、私の心に寄り添って励ましてくれる存在は、まるで包容力の大きな母性ある女性のようにも感じられた。
なんだか…凄く、安心感があった。
不思議と、根拠はないけど。
小さくて柔らかいふわふわの縫いぐるみだけど。
「…縫いぐるみ相手って…子供じゃないんだから」
つい自分で自分を詰って自嘲する。
そんな幼い子供のような自分は、とうの昔に置いてきたのに。
暗闇に慣れた目でリボンを見つめていると、手にしていた指先にこびり付く血液が目に入った。
「!」
そうだ。
はっと思い出したのは、真っ黒な羽根を持つ蝶々。
確かロードが食人ゴーレムだとか、訳のわからないことを言っていた謎の生き物。
それに齧られた跡だった。
慌てて辺りを見渡してみるけど、薄暗い檻の中でひらひらと動くものは見当たらない。
ぐるりと部屋を隅々まで見渡してみれば、重い鉄の扉に取り付けられているスライド式の小窓が、少しだけ隙間を開けていた。
………まさか。