My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
あれは夢なんかじゃなかった。
いつも目覚めたら朧気に頭の中が霞むような、そんな現象はない。
はっきり記憶にある。
あの柔らかい縫いぐるみの感触も。
高くて幼いソプラノの少女の声も。
寄り添うようにあやしてくれた温もりも。
酷く落ち着く、優しい子守唄を歌ってくれて──
「…子守唄」
そういえば。
なんだか聴き覚えのある子守唄だったような…
頭に片手を当てて考える。
巻かれた掌の包帯がじわりと痛んで、強制的に火傷へと思考が引き戻された。
そうだ、火傷。
「……痛…」
痛い。
寝ている間は痛みから解放されていたみたいだけど、決して痛みが治まった訳じゃなかった。
じくじくと体の表面を蝕むような全身の痛みは残ってる。
これ…治るのかな…。
いずれは痛みから解放されるだろうけど、跡とか…残ったり、するのかな。
「……」
じっと包帯だらけの体を見下ろす。
このまま、アレンの退魔の剣を胸に受けた時みたいに、跡が残り続けたら……どうしよう。
自分の容姿に自信がある訳じゃないけど。
火傷だらけの姿になってしまえば、もうユウに会わせる顔がない。
そんな醜い姿、見せたくない。
「…はは…」
口から乾いた笑い声が零れた。
何、考えてるんだろう、私は。
ユウに合わせる顔がないだなんて。
ノアだってことを隠し続けてた時点で、ユウと向き合える資格なんてないかもしれないのに。