My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「そうだね。確かに子供にできることは限られているかもしれない」
とん、と。グラスの縁を指先で軽く叩いて、その場の雰囲気にそぐわぬ笑顔をティエドールは浮かべた。
「その為に親がいるんだよ」
にこりと笑いかけられて、神田が訝し気な顔をする。
「子供の行動は親の責任だ。私が責任を持つ。だから気にすることなく、行きなさい」
「師匠…流石にそれは──」
「なんだいマーくん。もしかしてユーくんを止めるのかい?」
「そ、それは…」
雪のことを思えば、神田の背中を押してやりたい。
しかし元帥であろうとも、ティエドール一人で全責任を負える問題なのか。
難しい顔をするマリに、ティエドールはのほほんといつもと少しも変わらぬ、穏やかな笑みを浮かべた。
「私もこれでいて元帥の端くれだからね。可愛い我が子の一人も守れない程、非力なつもりではないよ」
「…師匠…」
「だから後のことなど心配しなくていい。今見るべきものを見据え、向き合うべきものとぶつかって来なさい。何に置いても遅過ぎるということはない。けれど"いつか"と思える事柄は、全て"今日"できるものでもあるんだよ」
優しく、しかしはっきりと言葉に変えて伝えてくるティエドールの思いは、愛情に満ちていた。
真の親のように子を思い、見守り、その背を押すかのように。
そんなティエドールの姿勢は、普段は神田が嫌悪感を向けて嫌がっていたもの。
しかし今の神田の顔には歪みなどなく、真っ直ぐにティエドールへと向けられていた。