My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「"行かない"じゃなく"行けない"って言ってたもんねぇ。確かに無許可で雪ちゃんに会いに行けば、色々と問題視はされるだろうね。特に雪ちゃんと特別な関係にあったユーくんなら、尚更」
「……」
「雪ちゃんの為を思っての我慢だっていうのはわかるよ。でもね、ユーくん。ラビの言う通りに、知らないこと程怖いことはないんだよ」
「………あんたに何がわかるってんだよ」
飄々と知った顔で言葉を投げかけてくるティエドールに、神田は静かに怒りを露わにした。
どんな思いで足を止め、言葉を閉ざしているのか。
誰かにわかって堪るかと言うかのように。
「わからないよ」
そんな神田の殺気を肌に感じながら、あっさりとティエドールは首を横に振った。
「だって君、いつも閉ざすだろう? 踏み込んでくるなって、刺々しい程に心から針を剥き出しにして」
初めて出会った時からそうだった。
アジア研究所の地上、瓦礫と廃棄物で塗れた地表に血塗れの姿で六幻を手に、立っていた幼い神田。
其処でティエドールに拾われた際に、教団に入団したいと頼み込んだのは、ティエドールや教団に心を開いたからではない。
誰にも口にしていない、彼なりの目的があるからだ。
そのことに薄々勘付いてはいたものの、今までティエドールは一度も問いかけたことはなかった。
「でも、これでも私は君の親代わりをしてきたからね。理解できていることもあると思ってるよ」
三分の一程に減ったグラスの中のテキーラを見つめて、ふと思い出すように話し出す。
「ユーくんは辛いことがあると、塞ぎ込む癖があるからねぇ」
そんなティエドールの顔は、正に子を思う親のような表情をしていた。
「苦しい時、君は苦しいとは言わないし、泣きたい時、君は尚のこと殻に閉じこもるだろう? 辛い時程、強く心に蓋をする。感情を殺して、誰にも弱い心を見せようとしない」
「……」
「それが君らしさだとわかっているから、今更変えてみようなんて言わないよ。…でもね、ユーくん。そんな君が、心開ける相手を見つけられたんだ」