My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「うっせぇな。頭なら使ってる。考えたらわかることだろ」
鬱陶しそうにバシリと叩いてラビの手を振り払う。
しかし声も荒げず淡々と告げる神田の顔に、感情はない。
「俺達はエクソシストだ。AKUMAを倒す為に教団(ここ)にいる。優先すべきはそれだろ」
「……聖戦の為なら、雪の犠牲は仕方ねぇって…まさかそう言うんさ?」
再び机へと向き直った神田の目が、一瞬だけラビを映す。
それはほんの瞬く間だけで、再び目の前のテキーラへと移し変えられた。
「………あいつはノアだ。俺とは立場が違う」
耳を一心に傾けないと拾えない程の大きさで告げられたのは、雪をノアだと認めるもの。
どこか儚くも聞こえる響きに、ラビは堪らず拳を握った。
「…だから? だからなんだってんさ」
エクソシストとノア。
両極端な存在である二つが、相容れないものなのはわかっている。
しかしラビ自身、どちらにも付けない身であるからこそ抱いた感情。
「雪がノアだから、立場が違うから、だからもう大事じゃねぇって? そんな軽いモンだったのかよ、ユウの想いは」
「……」
「っざけんなよ…オレはこんな奴に雪を譲ったんか。冗談じゃねぇ」
神田の言い分にも一理ある。
そのことはラビも理解していた。
それでも納得いかないのは、神田が雪から目を逸らし続けているからだ。
「なんで雪がノアになったのか、それでもなんで教団(ここ)に身を置いていたのか。なんにも耳を傾けないままで、知った顔で受け止めてんじゃねぇさ」
ふつふつと怒りが湧く。
握った拳で今すぐ殴ってやりたい程だったが、それをすれば恐らく再びティエドールの制止がかかるだろう。
ぐっと行き場のない拳を、ラビは強く握りしめた。