My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
雪の為を思うなら伝えるべきだ。
しかし雪と関わっていた時のラビは、教団のエクソシストでも彼女の友でもない、ブックマンとしてのラビだった。
その時知った情報を、此処で伝えていいものか。
「……」
「なんだよ、話があるなら言え」
口篭るラビに、苛立ち混じりに神田が催促する。
「んじゃ外に──」
「此処で言え。時間がないんだろ、さっさとしろ」
どうやら話は聞くものの、移動する気はないらしい。
目を向けることもなく、手は机に置いてあるテキーラへと伸びている。
酒を飲む手を止めない神田に、ラビは気付けばぐっと拳を握っていた。
雪が拘束されていることは、神田も知っている。
どんな状況かは知らなくても、雪とは特別な関係だったはず。
そんな時に酒飲みの娯楽に走るなど、一体どんな心構えなのか。
「…なんも知らねぇからって…何しても許されるなんて思うなよ」
「……あ?」
つい声が低くなる。
明らかに悪意あるラビの言葉に、神田もまた間を置いた後、ゆっくりと鋭い眼光をラビへと向けた。
「んだとテメェ。喧嘩売ってんのか」
「売られた喧嘩の意味もわかってねぇだろ。それでも買うんさ?」
「そのうざい声を聞かずに済むなら、殴り潰してやる」
「はっ、ユウはいっつもそうさ。気に入らないことがあったら実力行使。なんでそうなったのか、考えることをしない。んなのただの愚か者だ」
「…どうやら本気で潰されたいらしいな」
ぴきりと、神田の額に見てわかる程に青筋が浮かぶ。
しかしそれはラビもまた同じだった。
当たり前に雪の好意を受けて、当たり前に雪の想いを受けている。
そんな神田の存在が、堪らなく憎らしく感じた。
どんな決死の思いで、切なる願いで、雪が神田を想い続けているのか。
この男はわかっているのかと。