My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「すげぇさマリ! 読み通りだったなっ!」
「前にも一度あったんだ、師匠が神田の晩酌に乱入したことが。もしかしてと思ってきたが…正解だった」
どうやら二人の会話からして、目的はティエドールではなく神田だったらしい。
「一体どうしたんだい? こんな夜遅くに、ユーくんに用事なんて。あ、どうぞ入って入って。立ち話もなんだし」
ソファへと促すティエドールに、頭を下げて部屋へと踏み入れるマリ。
対してラビは、さっと頭を下げはしたものの隻眼は神田しか捉えていない。
足早にソファに座っている神田へと寄ると、忽ちその顔は笑顔を消した。
「ユウ、話があるんさ」
「なんだよ」
「…あー…場所変えね?」
顎をくいと動かし、部屋の外へ出るよう促す。
ショットグラスを手にしたまま、神田は眉を潜めた。
「面倒な話なら今度にしろ。無駄話はしたくない」
ただでさえティエドールの下らない愚痴を散々聞かされたばかりだと言うのに。
特に今は、面倒事は何も受け付けたくない気分だった。
散々自分の中で目まぐるしく渦巻いている感情も、上手く整理できていないのだから。
「無駄じゃねぇさ。大事な話なんだよ」
神田の言葉が気に入らなかったのか、ラビの表情がむっとしたものに変わる。
「時間もあんまないんさ。だから聞けって」
「チッ…んだよ。下らない話だったら殴るぞ」
あおるように一口でグラスに入った琥珀色の液体を飲み干すと、たんっと空になったショットグラスを机に叩き付ける。
そうしてラビの表情を気にかけることもなく、逆に神田は睨み付けた。
黒曜石のような鋭い二つの眼光。
臆することなくラビもまた見返して、しかしその口は中々開かなかった。
マリはなんとなく事情を察してはいるだろうが、此処にはティエドールもいる。
下手に雪の名前を出していいものか悩んでしまう。
その枷となってしまっているのは、やはりブックマンという立場だった。