My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
何故絵画に埋もれたこの部屋で、師である元帥と向き合って神田が酒を酌み交わしているのか。
遡ることそれは数時間前のこと。
テキーラ片手に自室へ戻ろうとしていた神田を、偶々鉢合わせしたティエドールが引き止めた。
何故か号泣しながら。
嫌な予感しかしないと早々神田が立ち去ろうとすれば、そこは相手も元帥となる人間。
あれよあれよと引き摺られ、あっという間に彼の自室へと放り込まれてしまった。
そこで待っていたのは下らない愚痴の数々。
つい最近入団したばかりの新人エクソシスト、ティモシー・ハースト。
10歳未満の少年の配属先は元帥の紅一点、クラウド・ナインの部隊となった。
それがティエドールは何かと不満らしい。
最年少エクソシストともなれば、注目度も高まる。
自身の部隊所属である神田達を、息子と称し愛でているティエドールのこと。
本当に息子のような年齢であるティモシーを、心底可愛がりたかったのだ。
「だってさぁ…クラウドは素敵な女性だけど、規律に厳しい所があるからねぇ。大変だと思うんだよ、ティモシーも」
「んなの他人の勝手だろ」
(寧ろこの部隊じゃない方が救いだと思うがな)
とは心の中だけで。
表立っては口にせず、神田は目の前のショットグラスに残っていたテキーラを飲み干した。
「それより返せ、俺の酒」
「ああ、うん。どうぞどうぞ」
たんっとショットグラスを机に叩き付けるように置き、据わった目で催促してくる。
一瞬悪酔いしているようにも見えなくもないが、神田はいつもと変わらぬままだった。
まだテキーラの瓶の中身は半分程しか減っていない。
これではほろ酔いくらいにしか酔えない。
合いの手よろしくショットグラスに酒を注ぐティエドール。
彼もまた持参したグラスを手に飲酒していたが、その顔は涙と酔いで真っ赤。
神田に比べれば幾分アルコールの耐性は弱いらしい。