My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
消え入りそうな儚い声。
涙声にも聞こえる雪のそれに、ロードは僅かに身を乗り出した。
「…今はなぁんにも考えなくていいから。眠って、雪」
深く、深く。
誘うようにロードの声が耳へと届く。
「──"そして坊やは眠りについた"」
それが優しい歌声と変わるのに、然程時間はかからなかった。
(…あ…これ)
瞼を閉じた暗い世界で、耳にした歌声に浸る。
「"息衝く灰の中の炎"──"ひとつふたつと"」
聴いたことのある詩だった。
優しい愛ある子守唄。
自然と瞼が重くなる。
微睡みから深い眠りへと落ちていく感覚。
「"浮かぶふくらみ愛しい横顔"」
子守唄に誘われるように、気付けば深く呼吸していた。
深く、深く。
落ちていく感覚。
それは心地良い誘い。
「"つないだ手にキスを"──」
静かに歌い終えれば、訪れるのは静寂。
「すぅ…」
聞き耳を立てたロードに届いたのは、穏やかな雪の寝息。
上下にゆっくりと動く胸の呼吸。
寝入る顔は、もう険しい表情を浮かべてはいない。
そんな雪の様子を伺い、ほっと息をつく。
「ふかぁくお眠り。今は夢も何も、見ないでいられるようにしてあげる」
喜びも悲しみもない、平和も混沌もない深い世界へ。
ワイズリーの思考とも繋げないように、眠りに落ちた雪の意識を深く深く沈めていく。
丸い縫いぐるみの手を伸ばして、間近にある雪の頬にそうと触れた。
「少しでも雪に安息が訪れますように」
縫い付けられたちぐはぐな口紐を、優しく頬に押し付ける。
それでも起きることなく深く呼吸し眠り続ける雪を、ロードはじっと見つめ続けていた。
(この詩で眠りにつけるなんてね…)
「やっぱりキミはノアの子だよ。雪」