My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「雪って、ホントは甘えんぼさん?」
「……」
縫いぐるみを抱いて寝る年頃でもないだろう。それでも力の入らない腕はしっかりとロードを拘束して、放そうとしない。
腕の中に大人しく納まったまま見上げれば、雪は子供のように小さく身を縮ませてロードを掻き抱いた。
「…大丈夫だよ。大丈夫」
ぽふぽふと、丸い手があやすように雪の腕をそっと擦る。
「ホントは誰かに甘えたかったんだよね。助けを求めたかったんだよね。…でもあのコを先に、守ろうとしたんだよね?」
「…っ」
「わかってるよ。雪が頑張ってるの、ボクはちゃんと知ってるから。偉いねぇ…良いコ」
よしよしと小さな声があやすように優しく響く。
暗い独房の中で、雪は腕の中にある柔らかい感触を実感しながら固く目を瞑った。
「……ロードって…変な縫いぐるみだけど、」
「むぅ。変って酷いなぁ」
「…本当に、ロードが私の家族だったら…良かった、のに…」
「……」
小さな声で、堪えるように呟く。
その切なる願望を耳に、ロードは静かに沈黙を作った。
「……だぁいじょうぶだよ」
やがてぽつりと返されたのは、愛情含んだ優しい音色。
「辛いこと、沢山あったけど…それは全部、雪が嬉しいことや楽しいことも知ってる証だから。きついことも、苦しいことも、喜びを知ってるから感じること。生きてるから、感じられていることだよ。…だから生きて、雪」
「………ん」
震える。
微かに頷きはしたけれど、雪の声は今にも泣き出しそうなものだった。
「…でも…少し……疲れちゃった…」
そう、力なく弱音を落として。