My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
大人しく目を瞑った雪を確認すると、ロードは深呼吸をするかのように、すぅと息を吸った。
瞼を閉じた暗い世界でその音だけを耳にして、雪はついクスリと笑う。
縫いぐるみが息をするなどと、不可思議なこともあるものだと。
千年公は 探してる
大事なハート 探してる
アナタはアタリ? 確かめよう
「せんねんこぉ~は~♪」
「ちょっと待った」
「なぁに?」
「何その不気味な歌。どこが子守唄? 悪夢でも見そうなんだけど」
「えぇ~、良い歌でしょぉ~」
「どこが。全く。微塵も」
声は幼い少女のもの。
そこから奏でられる歌声は、確かに可憐で可愛らしい。
がしかしメロディーはなんとも不協和音のような不気味なもので、背筋に寒気を感じるようだった。
思わずストップをかけてしまう。
「千年公の歌なのにぃ」
「何、千年公って」
「千年公は千年公だよ」
「…だから何、千年公って」
「せんねんこーはせんねんこ」
「わかったもういい」
どうやらこの謎の縫いぐるみは、謎の詳細を教えてくれる気はないらしい。
ジクジクと痛む体を抱えたまま、頭も抱える程の気力は雪には残っていなかった。
水しか口にしていない体は精神と共に限界。
疲れた様子で、上げていた頭を再び枕にぼふりと落とす。
「もういいよ…ありがと。気持ちだけ受け取っとく」
「そう? 残念」
「…ん」
「…ん?」
包帯に巻かれた腕が広げられる。
きょとんと見てくるロードのボタンの目を見返す、疲れた様子の暗い瞳。
ああ、となんとなく察したロードはその細い腕の中に身を埋めた。