My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「体、痛い?」
硬いベッドに横になり、ジクジクと痛み続けている体を休ませる。
枕に横に頭を預けている雪のすぐ目の前。
寄り添うようにちょこんと座り込んでいるロードが、伺うように顔を覗き込んだ。
「…ん」
不思議とロードには素直な言葉を吐き出せた。
微かに頷けば、ボタンの目が小さな机に置かれた薬の袋に向く。
「あれ、お薬なんでしょ? 飲んだら楽になれる?」
「…多分」
「じゃあ──」
「飲めない」
「なんで?」
「…飲んでも、吐くから…」
こてんと首を傾げるロードから目を逸らして伏せる。
薬は怖い。
何が入っているかわからない。
婦長が危害を加える人物とは思っていない。
寧ろ信頼している方だ。
それでも体が拒絶してしまうのは、昔に何度も刻まれた身体検査を思い出してしまうからだろう。
(…弱いな…)
もう昔のことなのに。
あの時メスを入れられた体は、跡なんて残さずに消え去った。
しかし消えたのは傷跡だけだったらしい。
心に刻み込まれた痛みは消えずに残っている。
「我慢できる?」
「…する」
雪自身、我慢強い方だとは自覚していた。
鈍い痛みは体に残っているが、悲鳴を上げる程ではない。
眠りの妨げにはなっているが、数日もすれば眠れるようにはなるだろう。
目を瞑る。
しかし眉間に刻まれた皺は消えない。
そんな雪の顔の横でそっと髪を撫でながら、ロードは縫い付けられて開かない口から声を発した。
「じゃあボクが子守唄、歌ってあげる」
「…子守唄?」
「うん。雪が安眠できるように」
「……私、子供じゃないけど…」
「だぁーいじょうぶ。ボクは"夢"の使徒だから。ちゃんと眠れるようにしてあげる」
「?(夢の使徒?)」
引っ掛かる単語を耳にしたが、ロードに関しては謎だらけ。
その単語の意味も理解はできないままだった。
ぽふぽふと優しく瞼の上を丸い手で撫でられる。
目を瞑れという催促だろう、仕方なく雪は従うことにした。
眠れるものなら眠りたい。
痛みから解放される方法は、どうやら今はそれしかないようだから。