My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「それより、怪我増やしちゃってごめんねぇ」
「…別に…ロードの所為じゃないでしょ」
血の滲む指先を見て呟くロードに、素っ気無くも首を横に振る。
そんな雪の姿に、ロードはちぐはぐな縫い目の口角を少しだけ柔らかく上げて笑った。
「"これ"はボクの体の一部から作った姿だから、長くは保たないの。でも消えるまで、ずーっと雪の傍にいるから」
抱いている雪の手に頬を擦り寄せて。
「独りにさせないよ。ボクが傍にいる」
声は緩い語尾を持つ少女のもの。
目の前にいるのも小さな一体の縫いぐるみのみ。
なのに何故か、包み込まれるような安心感があった。
「……」
疑問に思うことは沢山ある。
この縫いぐるみは一体何者なのか。
ロードとは。ティーズとは。
知らない名前なのに、何か引っ掛かるようなあやふやとした感情。
しかし全てその疑問は端に追いやられた。
「独りぼっちじゃないからね」
今目の前にある存在に、意識は奪われて。
どうしようもなく胸が熱くなったから。
「……っ」
微かに震える手でロードを握ったまま、雪は小さな縫いぐるみの体を抱き込んだ。
ぎゅうと強く抱けば、触れた火傷が鈍く痛む。
「…よしよし」
ぽふぽふと頬を撫でる布でできた丸い手。
体温などない、人の温かみのない手。
なのに優しく触れるその手が、今は酷く暖かく感じた。