My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「か、噛まれたっ?…って蝶が噛むはずないし…っ」
「そのコはティーズ。蝶じゃないよ」
どう見ても指先の赤い真珠は己の血。
動揺しながら指先と蝶々を凝視する雪に、のんびりと感情の起伏なくロードが否定する。
「蝶の形をした食人ゴーレムなの。だから無闇に手を伸ばしたら食べられるよぉ」
「……は?」
ぽかん。
そんな効果音が付きそうな顔でロードを凝視する。
何を言っているのか、言葉の整理が一瞬雪にはできなかった。
「しょく…じん?ゴーレム?」
「そう。人を食べるゴーレム。ちっちゃくても凶暴だからねぇ。そんなことより、」
「い、いやいや。"そんなこと"じゃない。大問題。何それ、また科学班の変な発明っ?」
「だから教団のものじゃないってば。ティーズもボクも、外から来たのぉ」
「外って何。森? なんでそんな所から…そもそも何者なの…っ」
「だからぁ、雪の家族だって」
「いや意味わかんないし! 新手の家族です詐欺!? もっとマシな勧誘文句付けたらどうかな!」
「…ぷっ」
「何故笑う!?」
ぽてぽてと丸い手で自身の腹部を叩きながら、おかしそうに笑うロード。
いくら相手が縫いぐるみでも笑われて良い気などしない。
思わず雪が声を荒げれば、ロードはけらけらと笑いながら首を横に振った。
「ううん。同じこと言ってるなぁって」
「は? 同じ?」
「うん。前も家族だよって言ったら、"間に合ってます"ってボク達のこと悪徳勧誘だと思って断ってきたんだよ。雪。面白いコだなぁって思った」
「……そんな記憶ないけど」
「それは雪が忘れてるだけ。そのうち思い出すよ、きっと。やっぱり雪は雪だね」
「……」
けらけらと未だに笑い続けているが、そう嬉しそうに伝えてくるロードに不思議と嫌な気はしなかった。