My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「はぁ…また科学班が余計な物でも作ったの…」
「それも違うよぉ~」
ならば原因はよく厄介な開発物を生み出す科学班かと溜息をつけば、ふるふると毛糸の頭が横に揺れた。
「ボクは教団で生まれたものじゃないから」
「?」
縫いぐるみの言葉がよく理解できず、まじまじと見つめてしまう。
そんな雪の目を、褐色の布に縫い付けられた二つのボタンの目が、同じくじぃっと見上げてくる。
身に付けた赤いリボンとスカート状の服、そして高いソプラノの縫いぐるみから発せられる声で、辛うじて性別は女の子とわかる。
口元は敢えてちぐはぐに縫われた、不恰好なもの。
そんな縫いぐるみの姿は、なんとも奇妙なものだった。
「それよりも、雪…」
「何…って、なんで私の名前知っ」
「やっと会えたねぇ!!」
「わ…っ!?」
じぃっと見つめ合うこと数秒。
うずうずとした様子で、縫いぐるみが指のない丸い両手を突き出す。
と、どこにそんな瞬発力があったのか。
柔らかいもこもこの足で地面を蹴ったかと思えば、ぴょんっと勢いよく雪の胸に飛びついた。
「会いたかったよ~! ちゃんと外で!」
「外って何…って痛いっ痛いってば痛いッ」
「あ。ごめぇん」
胸に飛び付いてスリスリと遠慮なく頬擦りしてくる縫いぐるみに、火傷の肌が悲鳴を上げる。
するとはっとしたつぶらなボタンの目が、やっと雪の姿を確認したかのようにまじまじと顔を上下に揺らして体を見つめた。
「…怪我だらけだね、雪」
「今更。最初から気付いて欲しかったんだけど…」
ファインダーという仕事柄、痛みには慣れている。
婦長から適切な治療も受けたから、我慢ならできる痛みだ。
多少しんどいけれど。
だから本音のままに返した。
「触れてなくても地味に痛いから」
「……」
「?……何?」
縫いぐるみに眉はない。
あるのは無機質なボタンの目とギザギザしたちぐはぐな縫われ口。
それだけなのに、胸にしがみ付いてじっとこちらを見てくる顔は、なんだか悲しそうなものに見えた。