My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
その場に尻餅をついたまま雪が不可思議な蝶を見上げていると、背後でごそりと何かが動いた。
「ごめんねぇ、雪。痛かったでしょ。大丈夫?」
心配そうに伺ってくる高いソプラノの少女の声。
はっとして背中に隠していた物体に目を向ける。
見えたのは、ちょこんと石の地面に座り込んでいる、もこもこの毛糸頭をした褐色の、
「……人形…?」
真っ赤なリボンを身に付けた、一体の縫いぐるみだった。
「なんでこんな縫いぐるみが此処に…(って待て)」
唖然とした後、つい眉間に皺が寄る。
何故縫いぐるみがこんな所にいるのか、ではなく。
何故縫いぐるみが一人で喋って動いているのか。
そこが問題だ。
そんなこと現実にはあり得ないこと。
「…まさか…また幽霊とか…っ?」
新教団に引っ越しても尚、霊は彷徨っているというのか。
ゾンビ化事件のことを思い出すと強ちその予想は当たってるかもしれないと、雪は思わず尻餅をついたまま縫いぐるみから後退った。
「違うよぉ。ボクは幽霊なんかじゃないよ。ちゃーんとした生きてる人間だから」
「生きてないから。縫いぐるみだから。……イタイ」
「だからぁ、ボク夢じゃないってばっ」
目の前の出来事につい感覚は麻痺していたが、改めて感じれば体中の火傷の痛みは地味に続いている。
となるとやはりこれは夢ではないらしい。
頬を少しだけ抓ってみれば、やはり痛かった。