My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
もこもことした毛糸物。
見知らぬ謎の物体だが、此処は黒の教団。
常識外れの開発物も、日々科学班で発明されている。
これもその一つなのだろうか。
なんでこんなことを、と場違いな気もしたが、これではいつまで経っても甲高い少女の声が邪魔をしてくる。
仕方ないと、雪は謎の物体に手を伸ばしてみることにした。
もこ、と触れた感触は正に毛糸。
ぐいぐいと引っ張ってみれば、どうやら開閉窓に合わないサイズで挟まっているらしい。
「何これ…っ」
「痛いっ! 痛い痛いいたぁ~いッ!」
「ちょ、静かにして…ッ私だって痛いんですけどッ」
指先も火傷を負っているのだから、柔らかい毛糸であっても触れれば多少の痛みは走る。
それ以前に看守に気付かれてしまえば問題だ。
痛みに耐えて力を入れて引っ張れば、ぐいぐいと柔らかい毛糸物は伸びに伸びて。
「っ!?」
すぽんっ!と勢いよく窓から抜け出た。
否。そのまま勢いで雪の胸の中に突撃してきた。
「わ…っ」
勢い余ってそのまま謎の物体と共に、真後ろへと倒れ込む。
結果、
「い"…! つぅう~…ッ」
「大丈夫ぅ?」
どしんっと大きく尻餅をついて、体中の火傷が悲鳴を上げた。
「なんだ騒がしい! おい、何してるッ!?」
「! い、いえ…っ」
痛みに悶えていると、騒ぎを聞きつけた看守が小さな窓から鋭い眼孔を光らせてくる。
飛び付いてきていた謎の物体を咄嗟に背中に隠すと、雪は慌ててふるふると首を横に振った。
「チッ! なんで俺がこんな囚人の監視なんか…大人しくしてろッ!」
「す、すみません…」
苛立ちの声と同時に、ばしんっと勢いよく閉まる窓。
と、窓口が閉まる瞬間。
まるで水流が流れ込むように、するりと黒い何かが紛れ込んできた。
「…蝶?」
それは一匹の漆黒の蝶々。
見たことのない模様に、つい目を惹く。
暗い独房内なのに、何故かはっきりと目に映る様は幻想的にも見えた。