My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「よい、しょっと………あれ?」
最初は空耳かと思い、スルーしていた小さな声。
「ん、ん…っは、挟まっちゃった…ッ」
しかし小さな高い少女の声は、一向に消えてくれない。
「動けないぃ~っ雪ーっ助けてぇえっ」
寧ろどんどんはっきりとクリアに響き、ついには名前まで呼んでくる始末。
(え。何)
沈黙を作り続けていたが、とうとう雪は顔だけのそりと上げてみた。
「…え。何」
つい心情を口に出してしまったのは、予想の遥か斜め上をいくものが見えたから。
重い鉄の扉。
そこには独房を確認できるよう、小さなスライド式の開閉窓が付いている。
いつの間にかそこが開いていた。
本来なら外からの光が差し込むはずなのに、一向に光は入ってこない。
理由は単純。
その開閉窓に、もこもことした変な物体が挟まっていたからだ。
「早くしないと看守に見つかっちゃう。雪お願いっ引っ張ってくれないかなぁっ」
「………夢?」
内容はよく覚えてないが、最近変な夢ばかり見ていたような気がする。
これもその一つかと頬を抓ってみれば、火傷の跡が鈍く痛んだ。
思わず手を引っ込める。
「いった…っ」
となれば夢ではないのか。
「ボクは夢じゃないよぉっ現実だからッいいから早く引っ張って、看守に見つかっちゃうッ」
「引っ張るって…何を」
「頭っ見えてるでしょぉっ?」
「え、それ頭なの…」
未だに鈍く痛み続ける体を片手で押さえながら、恐る恐るベッドから降りる。
もこもこと開閉窓に挟まっている謎の毛糸物。
濃い紫紺色のふさふさとしたそれは、どうやら"頭"らしい。
と、その謎の物体から出る声が主張していた。