My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
雪はコムイに裏切られたと感じているだろうか。
またあの悲痛な顔で掴みかかり、痛々しい罵声を飛ばしてくるだろうか。
(…その方がまだマシだ)
それならば意思表示してくれるだけ、まだ良い。
ブックマンに緊急の報せを受け、急いで向かったヘブラスカの間。
其処で見たのは、ノアの姿を露わにしながら本当に敵なのかと疑問に思う程、弱々しい姿をしていた雪だった。
全身に怪我を負い身を震わせ、俯いたまま誰とも目を合わせようとしない。
生きること事態、気力を失くしたかのような姿にコムイは言葉を失った。
咄嗟にかける言葉が見つからなかった。
意思表示すらしなくなってしまえば、彼女の心は潰されていくしかない。
「とにかく、あの子に今は下手なことをしないで下さいませねバク支部長ッ」
「な、何故俺様に言うのだ、失敬だなっ。我々は何もしていないぞっ」
厳しい口調で忠告する婦長に気圧され、たじたじとバクが反論を示す。
「…そうだね」
重い鉄の扉を見つめながら、コムイもまた力なく賛同した。
「僕達は何もしていない。…何も"できていない"んだ」
力なき声は、重い扉に遮られ。
雪の下へ届くことはなかった。