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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



「何言ってるの…! 我慢なんて偉くもなんともないわ! 自分の体を一番に気遣えるのは自分だけなのよ!」


 薬を拒絶する雪に、キッと婦長の目が睨むように変わる。

 命を粗末にする者は、常人であろうとエクソシストであろうとノアであろうと関係ない。
 婦長にとっては許されざるものだ。


「飲みなさい、さぁ! じゃなきゃその痛みでまともに寝ることもできないわよ…ッ」

「…ぃ…っ」

「だから…!」

「…なさ…ぃ…」

「?…何…っ」

「ごめ…なさ…ッ」


 "ごめんなさい"

 俯いたまま体を抱いて雪が発した弱々しい謝罪に、婦長の動きが止まる。


「ごめん…なさ…っ…ごめ、なさい…っ」


 飲めなかった。
 暗い部屋で食事と称されて投与された薬を思い出して。
 体が拒否して打ち震える。
 飲んでも吐き出してしまう。
 それがわかってしまったから。

 クロスに連れられ暗い部屋から連れ出されても、雪の細い喉は暫くは食事を通さなかった。
 何度も食べては吐いての繰り返し。
 結果、吐き癖がついてしまって、治るまでに多少時間を要した。
 だからわかる。

 胃液が逆流する感覚。
 空っぽの胃に嘔吐感が拍車をかける。
 不快な気持ち悪さ。

 婦長は違う。適性実験の関係者ではない。
 それでも薬を受け取れないことに、雪は唇を噛み締めた。


「ごめんなさ…ッ」

「……っ」


 拒絶しながら謝り続ける雪。
 その姿を前にして婦長はただ、何も言うことができずにいた。

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