My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「っ…!?」
「どうしたのっ? 怪我が痛むのッ?」
ズクズクと鈍い痛みを走らせるのは体中から。
熱くて痺れるような、体内に直接刃物を突き立てられているような全身に響く痛み。
一体なんの痛みなのか一瞬わからなかったが、婦長の言葉にはっとした。
これは負傷した火傷の痛みだ。
先程までは熱さで朦朧としていた痛みが、激しく主張してくる。
痛みを感じろと言うかのように。
何故急に体が痛みを感じるようになったのか。
思い当たるのは、道化のようにノアから人へと切り替わった体の異変しか考えられない。
「は…っはは…っ」
「な、何。どうしたの?」
痛む体を抱いたまま、蹲って乾いた声で雪は笑った。
イノセンスに焼かれたのは自身が"ノア"だったからだ。
そしてその痛みに耐え切れていたのも"ノア"だったから。
嫌悪感を感じているものに、自分は助けられていたのだ。
なんて滑稽なことだろう。
「あはは…っ」
「貴女…」
「いっ…つ…ッ」
掠れた笑いが苦痛の悲鳴と変わる。
抱いた体を縮ませて、耐えるように身を震わす。
そんな雪の姿に、唖然としていた婦長ははっとして痛み止めの薬を差し出した。
「飲みなさい! 飲めば落ち着くから…ッ」
「っ…」
「ほら早く! その火傷は軽くはないわッ」
「…ッ…ぃ…」
「何?」
「…要らな…い…」
俯き耐え忍びながら雪の口から吐き出されたもの。
それは拒絶だった。