My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
力なく鎖で繋がれた両手に視線を落とす。
見えたのは、ガーゼと包帯で巻かれた両手。
まるで昔の自分だ。
暗い部屋に閉じ込められて、何度も適性実験を繰り返していた頃の幼い自分。
真っ赤な両手を見つめて涙を溢し、もう手の届かない所にいる両親へ思いを馳せた。
「……」
今は涙も出ない。
死んではいないのに、想い人へは声の一つも届かない。
「とにかく、食事をして。それからこれは痛み止めの薬ね。食事の後に飲んで──」
薬の入った袋を差し出した婦長の動きが止まる。
その目は雪の包帯の間から覗く肌へと向けられていた。
「…驚いたわ…」
すぅ、と肌の下に溶け込んでいくかのように、褐色の肌が東洋人独特の肌色へと変わっていく。
金色の眼も黒く塗り潰すように。
そして額の聖痕も、跡形も無く肌へと溶け込み消えた。
静かに驚きの声を上げる婦長の傍で、雪は何度目になるかわからないその現象を無言で見つめ続けていた。
(……道化師みたい…)
ころころと姿を変えて人を欺く。
まるでピエロのようだと思った。
そんな好き勝手に変わる自身の体に、嫌気しか感じない。
──ズキッ
唐突に痛みが走った。