My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「酷いわね…痛くない?」
「…我慢できます」
「本当に? 痛かったら遠慮なく言いなさい。耐えても完治が伸びるだけよ」
「…大丈夫です」
褐色の肌を覆う火傷の跡。
水膨れが破けた箇所も幾つも見当たり、清潔にし終えたその肌にガーゼを軽く乗せながら、婦長は顔を顰めた。
明らかに軽くはない全身火傷。
なのに本人は大丈夫だと言う。
その顔には覇気がなく目線も合わない。
痛みによるショック状態なのかとも思ったが、どうやら違ったらしい。
『婦長、雪くんの容態は──』
「手当てを終えたら伝えますので! 覗かないで下さいと言いましたが!?」
『ご、ごめんなさいっ』
不安な声が地下独房の扉の向こうから届く。
その言葉を全て聞き終わる前に、阿修羅のような顔で婦長は怒鳴り付けた。
全身に火傷を負っている雪には、薄い囚人服を脱いでもらっている状態。
そんな彼女を異性の目には曝せない。
いくら相手が教団一偉い室長であろうとも。
何も知らなかった婦長は、緊急でとコムイに呼ばれ、雪の事情を聞かされた。
ただただショックを受け、ただただ驚いた。
しかし褐色の肌に金色を眼を宿していても、怪我を負った身であれば患者と変わらない。
医務室に連れては来れないと言われ、早急に必要なものだけをまとめて婦長が訪れた場所。
それがこの地下深く暗い独房の中だった。
待っていたのは、鎖に繋がれた馴染みあるファインダーの雪。
動揺は隠し切れなかったが、今自分がすべきことはなんなのか。すぐに理解した婦長の行動は早かった。
大量の冷水で患部を冷やし、清潔に整えた後、抗生物質を含んだ軟膏で表面を覆う。
そうして優しくガーゼで覆えた頃に、やっとほっと婦長自身が息をついた。
それと同時に疑問を抱く。
治療を施している間、悲鳴の一つも上げなかった雪は、耐える仕草や感情的な表情さえも見せなかった。
明らかに2度以上の熱傷はあろうかと思われる火傷。
それも水で冷やすまでに少し時間が開いてしまった所為で、水膨れは所々破けている。
触れれば激痛が襲うはずだ。
なのに何故、反応の一つも示さないのか。