• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



「悪ィな、マリ。手伝ってもらって」

「いいんだ、気にするな」


 ミランダと別れた後、二人で昼間より人通りの少ない廊下を進む。
 ミランダに向けていた優しい笑みを消すと、マリの表情は真剣味を帯びたものへと変わっていた。


「雪が関係しているんだろう?」

「……」

「聞かなくても、なんとなくわかる」


 ラビの表情と、そしてその胸の内の鼓動に耳を澄ませれば。
 片耳を怪我した状態で拾える心音は、いつもより小さなものだったが。
 それでもラビの切羽詰った高鳴る鼓動ははっきりと伝わってきた。

 不安と苛立ち、そして強い決意。


「もしかして…神田に伝えるつもりなのか? 雪が室長に要求したことを」

「……悠長にしてる時間はねぇんさ。早くしねぇと雪が…」

「雪が?」

「……」


 また、あの痛ましい拷問にあってしまうかもしれない。

 ぐ、と唇を噛むラビの表情に、マリはもしやと盲目の目を止めた。


「ラビ…お前は──」


 その不安も苛立ちも決意も、全ては雪の為にと向けられているもの。
 そこには単なる仲間内への感情だけではない、別の想いが入り混じっているように聴こえた。


「マリ」


 その先の言葉をラビは許さなかった。
 向けられた顔は、力なき苦い笑み。


「それ、秘密だかんな。誰にも言うなよ」


 雪にこの想いは伝えた。
 そしてしかと返事も貰ったのだ。
 これ以上その想いに関して誰かにとやかく言う気はない。


「…ああ。わかった」


 多くを語らずとも察してくれるマリに感謝しつつ、ラビはヘラリといつものように砕けて笑った。


「んで。後捜してない所って何処だったっけな…」


 いつもの笑みを見せたラビの切り替えは早かった。
 口元に手を当てながら思考を巡らす彼の心音は、まるでスイッチを切り替えたかのようにガラリと変わっている。
 そんなラビの感情の切り替えに感心すらしながら、マリは提案すべく片手を軽く挙げた。


「それなんだが。一つ、思い出したことがあってな」










/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp