My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「悪ィな、マリ。手伝ってもらって」
「いいんだ、気にするな」
ミランダと別れた後、二人で昼間より人通りの少ない廊下を進む。
ミランダに向けていた優しい笑みを消すと、マリの表情は真剣味を帯びたものへと変わっていた。
「雪が関係しているんだろう?」
「……」
「聞かなくても、なんとなくわかる」
ラビの表情と、そしてその胸の内の鼓動に耳を澄ませれば。
片耳を怪我した状態で拾える心音は、いつもより小さなものだったが。
それでもラビの切羽詰った高鳴る鼓動ははっきりと伝わってきた。
不安と苛立ち、そして強い決意。
「もしかして…神田に伝えるつもりなのか? 雪が室長に要求したことを」
「……悠長にしてる時間はねぇんさ。早くしねぇと雪が…」
「雪が?」
「……」
また、あの痛ましい拷問にあってしまうかもしれない。
ぐ、と唇を噛むラビの表情に、マリはもしやと盲目の目を止めた。
「ラビ…お前は──」
その不安も苛立ちも決意も、全ては雪の為にと向けられているもの。
そこには単なる仲間内への感情だけではない、別の想いが入り混じっているように聴こえた。
「マリ」
その先の言葉をラビは許さなかった。
向けられた顔は、力なき苦い笑み。
「それ、秘密だかんな。誰にも言うなよ」
雪にこの想いは伝えた。
そしてしかと返事も貰ったのだ。
これ以上その想いに関して誰かにとやかく言う気はない。
「…ああ。わかった」
多くを語らずとも察してくれるマリに感謝しつつ、ラビはヘラリといつものように砕けて笑った。
「んで。後捜してない所って何処だったっけな…」
いつもの笑みを見せたラビの切り替えは早かった。
口元に手を当てながら思考を巡らす彼の心音は、まるでスイッチを切り替えたかのようにガラリと変わっている。
そんなラビの感情の切り替えに感心すらしながら、マリは提案すべく片手を軽く挙げた。
「それなんだが。一つ、思い出したことがあってな」