My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
おろおろと床を見て回っているミランダについていたマリが、バタバタと足音煩く駆け寄るラビへと顔を向ける。
同じ部隊所属であり昔馴染みであるマリならば、神田の居場所を知っているかもしれない。
「ユウ見なかったさっ?」
「神田? いや、見てないが…」
「一度も? 今日一日っ」
「あ、ああ…なんだ、何かあるのか?」
「それは…っ」
言いかけて口を閉じる。
言えない。
マリもあの場にいたから、ルベリエが極秘に教団に来たことは知っている。
しかしルベリエが雪に強制させた、拷問のような出来事は話せない。
知っているのは室長であるコムイと他支部の支部長、ルベリエの連れていたサードエクソシスト、そしてブックマンとして関わっていたラビ達だけだ。
しかし詰め寄るラビの剣幕とその鼓動から、切羽詰っていることは読み取ったのだろう。マリの表情が真剣味を帯びる。
「何かあったのか」
「……」
主語は言わずとも、ラビにもそれが何を問いかけているのかわかった。
雪に何かあったのか。
そうマリは聞いているのだ。
唇を噛むラビの表情に、マリが思わず一歩踏み出した時。
「神田くんなら、私見たわよ。ラビくん」
「え?」
「へ?」
ほわんっと。場の空気にはそぐわない雰囲気で、二人の間に口を挟んだ声が一つ。
思わずぽかんと目を向けるマリとラビの目は、気遣うように笑いかけるミランダを映し出した。
「マジでっ!? ミランダっ!」
「え、ええ…大分前だけど…食堂を出ていくところを」
両肩を掴み喰らい付いてくるラビに気圧されながらも、こくこくとミランダが頷く。
「手にお酒の瓶を持ってて、珍しいなって目を惹いたの」
「酒の瓶?」
「ああ…時々飲んでたみたいだからな」
ラビは知らない姿だったが、どうやらマリには馴染みあるものらしい。