My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「戯けめ…何が悩み多き年頃じゃ」
通路を駆けながら呟いたラビのブックマンへの謝罪は、彼の耳に届いてなどいなかった。
それでも弟子の意図はなんとなしに読めて、溜息混じりに悪態をつく。
それが単なる都合合わせの言葉ということは、ブックマンも重々理解していた。
ブックマンJr.であるラビはまだまだ情に熱くなり易く、他人に感情を寄せ易い。
冷静な一面と回る頭と記憶力を持つが、なんとも人間臭い性格も持っている。
ブックマンとして最適なものと不適なものを、顔の両面に宿している青年だ。
だからこそ重々理解していた。
ラビがなんの為に走っていったのか。
それでもブックマンの足は彼を後追いなどしなかった。
「放っておいて良いのですか? "あれ"を」
同じに何か感じ取っていたのか。通り過ぎ様に声をかけてくるルベリエに、目を向けることなく懐からキセル煙草を取り出す。
先の火皿に詰めた刻み煙草に火を灯し口に咥えると、飄々とした顔でブックマンは呟いた。
「四六時中子守が必要な弟子でもないのでな。要らん心配じゃて」
「……」
「月城雪の件も一段落したようだしのう。わしゃ寝る。また何か動くのであれば知らせとくれ」
しらっと応えながら軽く片手を挙げ、スタスタとその場を去る。
感情的なラビに比べ、ブックマンの仮面は分厚く固い。
何を考えているのか読めない小柄な老人の後ろ姿を、ルベリエはじっと鋭い目で見送っていた。