My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「それでは。暫く私は教団に身を置かせて頂きますので。よろしいですね? 室長」
「…わかりました」
再びコムイへと顔を向けた時には、もう鉛のような冷たい表情は消えていた。
にっこりと笑いかけるルベリエに厳しい目を向けたまま、返事一つで頷く。
そんなコムイとルベリエ、そして従う他ないヘブラスカを見上げて、ラビは握った拳の中で滲む己の汗を感じた。
このままではどう考えても良い展開に転びなどしない。
そもそも雪にとって良い結果などあるのだろうか。
敵として教団に処分されるか、駒として従うか。
(って、問題はそれだけじゃねぇだろッ)
生きるという選択を取るならば、駒として従う道以外にはない。
しかし身体以上に精神で追い詰められている雪の姿は、今にも命の灯を消してしまいそうにも見えた。
このままでは駄目だ。どうにかしないと。
そう頭の中では警告が鳴り響くのに、どうしても打開策が思い浮かばない。
(くそ…ッ肝心な時に使えねぇ頭さ…!)
自分にできることなど限られている。
そもそもできることなどあるのか。
自分はブックマン一族。
傍観者として、エクソシストにもノアにも干渉してはならない。
打開策など、打ち出せるはずもない。
マラダオに連れられていく雪の姿を見送る。
「…っ」
それでも雪は一瞬だったが、意思表示をしたのだ。
ラビの服を握り、恐怖を称えた目で見つめ、言葉にならない助けを乞うた。
今まで一度だって助けなんて求めてこなかった彼女が、確かに見せた姿。
それを見て見ぬフリなどできようか。