My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「これは…酷い…っ」
「何をしたんです、彼女にッ」
「なに、少し事故があっただけです。彼女の命に別状はありませんよ」
真っ先に駆け寄ってきたのはバクとコムイ。
申し訳なさそうに待機するレニーと、残りのサードエクソシストであるキレドリとゴウシの姿が後方に見える。
レニー一人では、コムイ達を足止めすることはどうやら難しかったらしい。
雪のノアの姿に眼鏡の奥の切れ目を見開きつつも、火傷の有り様に顔を歪めルベリエへと噛み付く。
そんなコムイを前に、ルベリエは一切動揺など見せなかった。
「それよりこれで確認できたでしょう、室長。月城雪が正真正銘、ノアであるということを。彼女が口を割ろうが割らなかろうが、暴く方法は幾らでもあるのですよ」
「その方法は合法的なものですか」
「合法? 何を仰る。ノア相手に法規も何もないでしょう」
は、と鼻で笑うルベリエにコムイの視線の鋭さが増す。
お互いの間で作られる重い沈黙。
それを裂いたのはバクだった。
「コムイ! 今は話より月城の手当てが先だろう…ッ!」
「…ああ、そうだね」
「治療なら心配なさらずとも、すぐに手配を──」
「手配はこちらでします。長官は何もしないで頂きたい」
ぴしゃりとコムイの声が遮る。
そこには一寸の反論の余地も許さぬ響きがあり、ルベリエは沈黙を作ると微かに笑みを浮かべた。
「わかりました。ではそこは室長にお任せ致しましょう。マダラオ、彼に従うように」
「…御意」
「しかし彼女の体が回復次第、また取り調べはさせて頂きます故」
一瞬だけ、ルベリエの目に鋭い光が宿る。
その目は確かにマダラオの腕の中にいる雪へと向けられていた。
そう、まだ話は終わってなどいない。
彼女の口からはっきりとその意思は聞いていないのだから。