My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「すみません。まさかこのような事態に陥るとは。すぐに手当て致しましょう」
雪の傍に寄るルベリエ。
マダラオに抱かれたまま、俯いた雪の視線は合わない。
「ですが貴女も感じたでしょう? これではっきりしました。ノアである貴女の正体と、そしてその力を」
俯いたままの雪にそっとルベリエが顔を寄せる。
囁くような優しい声をその耳に吹き込んだ。
「貴女はノアです。イノセンスとは異なる力を持っている。──その力を我々の為に使いなさい」
ぴくりと、初めて雪の体が反応を示した。
微かに顔を上げて見えた表情は、理解できていない困惑したもの。
そこにルベリエは薄らと口元に笑みを浮かべ微笑みかけた。
「私の、我々教団の手足となりなさい」
「…な、に…?」
よくわからなかった。
自分はノアだというのに。
教団の敵だというのに。
その力を教団の為に使えと、そう言うルベリエの考えが。
掠れた声で戸惑う雪に、ルベリエの手が伸びる。
肌の上擦れ擦れを這う微かな手の感触に、焼かれた肌は痛みを伴う。
「痛い思いは嫌でしょう? 貴女の経歴は知っています。その身をイノセンスに焼かれて、体を弄られ調べ尽くされたいですか?」
「…っ」
微かに震える雪の体を、まるで労わるように。触れるか触れまいか、微かな距離を保ちつつルベリエは爛れた肌を優しく撫でた。
「貴女はノアです。我々の為に力を貸すか、敵の情報源としてその身を材料にされるか。どちらかしか道はありません。…どちらが賢い選択か、貴女にもわかるでしょう」
言葉の出てこない雪に、優しく囁かれる言葉の数々。
生きるか死ぬか。
そう言っているかのようにも聞こえる問いに、雪の体は震えた。
選択肢の提案などではない。
これは命令だ。