My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「そう気性を荒立てずとも、こちらで治療の手配はします。元よりその程度の傷、ノアである彼女の命には別状ないでしょうが」
「その程度だと…? ふざけんなさッ!」
はっきりとした理由などない。
しかしラビには確信に似た思いがあった。
「わかっててやっただろ、ルベリエ! 雪がこうなるのを知ってて、ヘブラスカに探らせただろ…!」
「なんのことやら。私はノアである彼女の姿を確かめたかっただけです」
ラビの腕に抱かれたままの雪を今一度見据える。
ボロボロに焦げ付いた服の下から覗く皮膚は、浅黒い褐色肌。
朧気に開いた瞳は輝くような金色。
そして前髪の隙間から覗く額の聖痕。
見間違いようがない。
それは確かにノアである者の姿だった。
「それよりマダラオに彼女を渡しなさい。早く治療を施させたいのなら」
「…ッ」
ラビに責め立てられても顔色一つ変えず、淡々と要求してくる。
ルベリエのその姿に苛立ちは増したが、抗うことはできない。
雪の為を思えば、優先すべきはそれだ。
苦虫を噛み潰した顔で、ラビは抱いていた雪の体から手を退いた。
く、と服を引かれる感覚。
「……雪…?」
小さな抵抗を感じて視線を落とせば、ラビの服の裾を握る爛れた手が見えた。
朧気だった眼差しが、はっきりとラビを捉えている。
金色のノアと同じ色を宿した瞳。
しかしその目は、ラビが今まで見てきたどのノアとも違っていた。
そこに見え隠れしていたのは"恐怖"。
「…っ」
何も言葉はなかった。
けれど微かに震える手でラビの服を握り、恐怖を称えた目で見てくる様は、まるで助けを乞うているように見えた。
「っ雪…」
咄嗟に握り返そうとしたラビの手を止めたのは、マダラオ。
あっさりと担がれた雪の体はラビから引き離され、袖から力なく手が離れる。