My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「むむ…お。ならばルルの能力を使っていつぞやの時のように、教団に忍び込むのはどうだ」
ルル=ベルとは第12使徒、"色(しき)"のノア。
その能力は体を有機物から無機物まで、自在に変化させること。
以前教団側の人間に成り済まし、こっそりと内部に彼女を潜り込ませた経験がある。
それならどうだと提案するワイズリーに、ロードが口を開いた時。
「主人(あるじ)がそうしろと命ずるならば従いましょう」
コツ、と高いヒールの足音を立てて談話室に踏み込む影が一つ現れた。
女性にしては長身な方で、細身の体に合ったぱりっとしたパンツスーツ姿。
長い黒髪は綺麗に切り揃えられ、その下にある顔は切れ長の目に整った顔立ち。
その女性こそノアの一族の一人、ルル=ベル。
「如何致しましょう」
「んン~、そうですネェ…同じ手が二度通じるとは考え難いですネェ♡ 教団の人間は狡賢い者ばかりですカラ♡」
振り返り問いかけるルルの視線の先。
暗く長い廊下の奥底から、ぽよんぽよんと風船のように肥えた腹を揺らしながら現れたのは、なんとも奇妙な姿の生き物だった。
顎が外れたのではないかと思われる程、歯が剥き出しの大きな口。
エルフか悪魔のように極端に尖った長い耳に、曲がった鍵鼻。
小さな丸眼鏡の奥の瞳は見えず、長いシルクハットにとんがり靴。
まるでピエロのような出で立ちをした人物は、他のノア達と同じ褐色の肌をしているが、とても同じ人間とは思えない姿をしていた。
ノアの一族の頂点に立つ者。
第1使徒、"千年伯爵"である。