My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「わかってるなら聞くな。お前と話してる暇はねぇんだよ」
余程沸点は下がっているのだろう。淡々と冷たい声で返すティキに、ターバンの青年──ワイズリーはにこりと笑みを返した。
「まぁそう苛立つでない。気持ちはわかる」
「だから俺の心を」
「読まずともわかるわい。…ワタシも同じだからのう」
す、と開くワイズリーの細く薄い瞳。
ふと口元の笑みを消せば、彼の顔は忽ち冷酷なものへと変わった。
「一部始終視ておった。その場の者の頭を全て潰してやりたいと思ったからのう」
「……」
微かな殺気が漏れる。
ワイズリーのその姿に直感したティキは、眉間の皺を緩めた。
「…感じたのか、」
「無論。言うたであろう。"怒"のノアメモリーはワタシらにも強い影響力を持つ」
「じゃあ…あれは──」
「雪の記憶だ」
「…ヒ? 雪?」
「あの暴力女かよ」
眉間の皺は消えたものの、難しい顔で黙り込むティキ。
置いてけぼりを喰らっているジャスデビは、不思議そうに首を傾げた。
一体なんの話かと。
「主らも先刻、感じたであろう。イノセンスに焼かれる同胞のメモリーを。あれは雪のものだ」
「へー……はっ?」
「えぇえっ! あれただの夢じゃなかったの!?」
「何故気付かんのだ…御主らは」
素っ頓狂に驚いた声を上げるジャスデビに、ワイズリーは呆れ顔で溜息一つ。
いくらまだラースラとして雪を家族に迎え入れてないにしても、あんなに強烈なメモリーを受ければ気付くだろうに。
ある意味、子供は恐ろしい。