My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「…ぅ…」
パリパリと微弱な音が耳に木霊する。
頭を揺さぶられる程の酷い頭痛が緩和していく感覚に、雪は頭を抱く腕を緩め目を開いた。
パリパリと体を纏う微弱な光で、照らされた空間。
そこは白く細い糸のようなものが張り巡らされ、自身を包み込んでいた。
まるで毛糸の玉の中のような。
(これ…ヘブラスカの…?)
見知った髪束を見渡す。
真白な絹のように美しい繊維。
時に宙につり上げられ好き勝手にもされたが、触れる時は常に優しく扱ってくれていた。
こうして包んでくれている髪束も、優しく雪を受け止めている。
変わらないヘブラスカの優しさのようにも思えた。
「……ヘブラスカ…」
聞こえているだろうか。
恐る恐るその球体の空間の中で、ヘブラスカを呼ぶ。
此処から出して欲しい。
そう伝える為に、もう一度口を開いた。
「…?」
そこで目に映ったのは、真白な髪束の壁が発光するかのように輝き始める瞬間だった。
じわじわと大きくなっていく光。
(何…この光…?)
白く、目も眩むような光。
優しいヘブラスカの髪束の中にいるのに、何故か不安感が襲う。
球体の真ん中で体を縮ませ、不穏な空気に周りを伺う。
金色に塗り換わっている雪の目に映ったのは、白く輝く球体の内側に浮かぶ、十字架模様だった。
エクソシストが身に付けているローズクロスのような、はたまたクロス・マリアンの連れていた寄生型エクソシストの屍、"聖母ノ柩(グレイヴ・オブ・マリア)"の掲げる十字架のような、そんな神秘的にも見える複数の十字架模様。
「何、これ…」
ジュッ
「いたッ」
突如手に走る痛み。
身を竦ませ目を落とせば、褐色に塗り換わった左手。
ヘブラスカの髪に触れていたその手が、火傷を負ったように爛れていた。
「っ!?(えっ…な、何…!?)」
急な痛みに意味がわからず困惑する。
この痛みはどこからきたのか。