My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
ギリ、と歯を食い縛る。
その場に縫い付けられたように、ただ突っ立って傍観することしかできない。
ブックマンとしての立場に苛立ちさえ覚えながら、ラビは拳を握り締めた。
自分は何もできない。
雪に何もしてやれない。
元より、何か行動に起こす資格もないのだ。
苦々しく顔を歪め見上げるラビの目線の先。
そこには黄金色に輝くエネルギーを纏う雪の姿があった。
(……アレン…の、ノア化…?)
高圧エネルギーの弾く音と強い頭痛で朦朧としつつ、雪は叫ぶラビの声を確かに捉えていた。
引っ掛かる言葉に薄らと目を開き、朧気に疑問を抱く。
現時点でアレンはまだノア化していないのか。
そういえばコムイにアレンのノアの事情を聞かされた時も、その身にノアメモリーを宿しているだけで覚醒まで至っていないと言っていた。
(じゃあ…あの時の声は、誰の…?)
もしかしたらパリの魔導結界の中で共鳴したのは、アレンではなく別のノアかもしれない。
そんな考えが一瞬雪の頭を過ぎった。
だとしたら誰なのか。
──奴ヲ許スナ
「つぅ…ッ!」
頭の中で響く声。
──ィイインッ
同時に頭痛と耳鳴りが雪を襲う。
耳鳴りは不吉な予感だ。
はっと枷の嵌められた両腕を見下ろす。
雪の目に映ったのは、じわじわと褐色に染まっていく己の二本の腕だった。
「ッ…!」
その変化にゾッと身震いする。
また体が勝手に一時的変化を伴っているのか。
それとも──ノアとしての覚醒か。