My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
さわさわと肌の上を、産毛を撫でるように這う柔らかい髪束。
優しく撫でられているだけなのに、何故かぞわぞわと悪寒が背中を駆けていく。
(…気持ち、悪い…)
眉間に皺が寄る。
は、と雪の口から吐息が零れた。
「どうかね? ヘブラスカ」
「……微かだが…感じる…イノセンス…とは…違う気配だ」
「その気配を引き出すことはできそうですか?」
「引き出すって…何言ってんさルベリエ。雪はまだノアとして覚醒してないかもしんねぇのに、無理矢理んなもん引き出す必要なんてねぇだろッ」
「何を言っているのかね。月城雪が本当にノアであるのかどうか。教団の監視役を務める私は、それを見極める必要がある。そしてそれを確かめるには、実際に目で見る他ないのだよ。──ヘブラスカ、どうだね」
ルベリエの問いかけにヘブラスカは答えない。
しかし背中を駆けていた悪寒が確かに、全身へと広がるのを雪は感じた。
ぞわぞわと嫌な気配が駆ける。
勝手に体の奥底から熱を起こされて、勝手に揺さぶられているような感覚。
「は…っ」
息が上がる。
神田に貰った深く交わるようなキス。
初めてそれを受けた時に、この熱に揺さぶられるような感覚は似ていると思った。
体が震えて、熱に浮かされて、自分の意思では思い通りにならない体。
(…全然、違う…)
しかしこうして再び味わってみれば、それは全く違うものだと嫌という程実感した。
あの熱の昂りは、こんな不快感などではなかった。
体中を這うヘブラスカの髪。
まるでその一本一本が、体の奥底に入り込んでくるような感覚。
受け入れ難いものの侵入を許しているような、そんな熱がぞわぞわと雪を襲っていった。