My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「っヘブラスカが視ることができるのは、イノセンスを持ったエクソシストだけじゃないんですか…っ」
「確かに、ヘブラスカの能力が適応するのはイノセンスに向けてのみ。しかし彼女は寄生型エクソシストであり、その体全てがイノセンスのようなものです。ノアとエクソシストは対なる存在。貴女の自由に扱えない力も、刺激されれば起こされるかもしれない」
「刺激って…」
ルベリエの説明を聞いても、どうにも嫌な予感しかしない。
思わず後退る雪の足を止めたのは、ビンッと張られた足枷の鎖だった。
「こら。逃げ出さないようにと言ったはずですが?」
鎖を強く引き、にこにこと笑みを向けて言うはトクサ。
痛みよりもその現状に、雪は顔を顰めた。
逃げる道など何処にもない。
「おい、ルベリエ…ッ」
「君は黙って見ていたまえ」
「…ッ」
咄嗟に踏み出したラビを阻んだのは、ぴしゃりと跳ね返すルベリエの声だった。
翡翠色のラビの左目に映る、雪の姿。
通路の中央に立つ彼女に、白く柔らかいヘブラスカの髪先が触れた。
足元から這い上がるように、するすると絡んでいく髪束。
手足、胴体へと絡み付いた髪は、そうっと包むようにして優しく雪の体を宙へと持ち上げた。
「…雪…怖がるな…少し…探るだけだ…」
「…っ」
まるで大丈夫だと、そう意思表示するかのように。ヘブラスカの細い髪先が、するりと雪の頬を撫でる。
しかし撫でられた雪の表情は強張ったまま。
探られる時の不快感は、しっかりと体が記憶している。
それ以前に"ノア"という敵である称号を持ち、雪はエクソシストであるヘブラスカの手中にいる。
安心などできるはずもなかった。