My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
(…まさか…アレンと同じで、雪はまだノアとして覚醒してないってことさ…?)
思わず己の口元に手を当てて、ラビは考え込んだ。
もしパリの任務先で突如ノアの姿を見せた雪の行動が、本人も不本意なものだとしたら。
それだけで情報の捉え方も変わってくる。
「なので貴女に彼女の体のことを調べてもらいたい」
「…え?」
淡々とヘブラスカに命ずるルベリエに、反応を示したのは雪だった。
顔を上げ困惑の残る表情を向けてくる。
しかしルベリエの姿勢は少しも変わらなかった。
「ヘブラスカはその能力で他人の体内に探りを入れることができる。本当に貴女の言う通り、自身の力を操ることができないのか。調べてみることにしましょう」
「ぅ…嘘なんて言ってません…」
「ならば尚の事、調べる必要がある。ヘブラスカ、やりなさい」
「……」
「月城雪が本当のことを言っているのなら、貴女の能力で証明されるはずです。やりなさい」
ルベリエの再三の命に、じっと無言で雪を見下ろしていたヘブラスカの髪束が微かに蠢く。
するするとまるで植物の蔦が這うかのように、通路の柵を乗り越え伸びてくる触手のような髪を目に、雪は息を呑んだ。
以前、一度その髪に捕われ体を探られたことがある。
あの時にはもう恐らく、ヘブラスカは雪の中のノアの片鱗に触れていたのだろう。
だから違和感のようなものがあると口にしていた。
ぞわぞわと体を襲っていた不快感。
それを思い出して、雪はふるりと体を震わせた。