My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「然様。ヘブラスカにも協力して貰います」
「協力って…何をさ?」
「彼女の力を測る為の協力、ですよ」
両扉を手で押し開きながら、ルベリエの鋭い目が一瞬だけ雪を捉える。
ギィ、と開かれる扉。
高い天井に敷地面積も広いそこは、巨大な体を持つヘブラスカの為に作られた空間。
宙に設置された四方から突き出された通路の上を、ルベリエが先頭を切って歩く。
通路の中央まで辿り着くと、ルベリエは足を止め広い空間を見渡した。
「ヘブラスカ」
広い空間には似つかわない静かな呼び声。
しかしルベリエの声に、訪れることを知っていたかのように静かに通路の下から、ぬっと白い発光体が姿を現した。
触手のような自在に操れる髪束を持ち、その髪で覆われた目元は見えない。
しかしその目は、ルベリエから確かに雪へと移り変わった。
「……雪…」
ふっくらとした白い唇が薄く開き、そこから発せられた声は沈んだ音を含んでいた。
イノセンスの番人として教団から出ることのないヘブラスカだが、彼女もまたエクソシストの一人。コムイから雪のことは聞かされていた。
「…驚いた…まさか……お前が…」
「……」
その先は言葉にせず、ヘブラスカのか細い声が暗い天井へと吸い込まれるように消える。
しかしその先に成す言葉がなんなのか、雪は充分に理解していた。
だからと言って、なんと返せばいいのか。
言葉なんて見つからなくて俯くだけ。
「ヘブラスカ。貴女も知っての通り、彼女は我々にはない力を持っている。しかし本人はそれを操れないと言う」
「…どういうこと…だ…?」
「自分の力ではノア化できないと、そう言っているのですよ」
その言葉に反応を示したのはヘブラスカだけではなく、共についてきていたラビもまた。
(自分では操れないって…どういうことさ?)
俯いて動かない雪を見やりながら、急ぎ頭を回転させる。
雪のノア情報は何も入ってない。
本人が何も話そうとしないから、ラビにとっては未知のものだった。