My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「監視は私がつきましょう、マダラオ」
「……」
「大丈夫ですよ。逃がすようなヘマはしませんから」
にこやかに、無言のマダラオに歩み寄り足枷の鎖を手にしたのは、マダラオより明るい若葉色の髪をした青年。
瞑った目はにこにこと穏やかな線を描いているが、なんとなく胡散臭さが垣間見える。
マダラオとテワクは雪も面識があったが、彼は知らない。
しかしマダラオ達と同じ緋装束に顔の隈取りのような模様から見て、同じ鴉の仲間なのだろう。
「貴女も逃げ出そうとは考えないで下さいね」
鎖を手に、にこりと微笑む若葉色の髪の青年──トクサに、雪はなんとも言えない複雑な表情で返した。
ルベリエは一体何処に向かおうとしているのか。
このまま従って良い気はしないけれど、この狭い檻の中から出られるならば、とも思ってしまう。
外に出れば、神田に会える可能性もあるかもしれない。
そんな希望が一瞬雪の頭を過ぎった。
「さぁついて来なさい」
「長官、囚人を何処に…」
「大丈夫です、少しお借りするだけですよ」
ギィ、と重い鉄の扉が開く。
聞かされていなかったのだろう、雪と同じに困惑する警備班の男に通り過ぎ様に応えると、目も暮れずルベリエは地下通路を歩み進んだ。
「何突っ立ってるんですか。引き摺られたくないのならついて来て下さい」
「…っ」
ジャラ、と足枷の鎖を揺らしながら、その場に佇んだままの雪をトクサが促す。
にこにこと胡散臭さの残る笑みを浮かべて。
何処に向かうのか、先の見えない不安に駆られる。
しかし問いかけても望んだ答えが返されないことは、雪も薄々理解していた。
先を歩くトクサの背中を見ながら、背後のマダラオの気配を感じながら、恐る恐る雪が狭い独房の外に一歩踏み出した時。
「っ…待て!」
足音荒くバタバタと駆けてくる人影が、地下通路の奥から姿を現した。