My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「しかしどうにもこのままでは話が進まない。私は貴女の持っている"力"を確認したいだけなのですが」
先に話を切り替えたのはルベリエだった。
緩めていた表情を残念そうなものへと変えると、やれやれとわざとらしくも溜息をつく。
「致し方ありませんね。──マダラオ」
「御意」
ちらりと後方に目を向け命ずるルベリエに、静かに待機していた裏葉色の髪の男性が、手短に返事を返す。
低く聞いたことのある声に、雪はその男が自分を大量の札で拘束してきた謎の鴉だとすぐに気付いた。
「何を…する気ですか…」
「ああ、ただ枷を外すだけですよ。乱暴には致しませんから、暴れないようお願いします。我々に"敵"だと判断されたくないのであれば」
「ッ…」
ルベリエの言う通り、マダラオは雪の体には触れることなく静かに横を通り過ぎると、足枷が繋がれている石壁へと歩み寄った。
片膝を付いて、鎖と壁が繋がれた箇所に人差し指と中指を揃えてぴたりと当てる。
「"解"」
低い声で一言、マダラオが言霊を発すると繋ぎ目もなく溶接されていた鎖が、意図も簡単に壁からぼろりと外れ落ちた。
何故独房に繋ぎ止めておく為の錠を外すのか。
その意図がわからず、雪は困惑顔で一部始終を眺めていた。
「それでは行きましょうか」
「…行くって…何処に」
椅子から腰を上げ、鉄の扉へと向かうルベリエの言葉に疑念を抱く。
困惑顔のまま問いかける雪に、ルベリエは顔だけ振り返るとにこりと笑ってみせた。
「貴女の力を確かめに、ですよ」