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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



 コツ、と開いた扉から踏み入れる足。
 外の光の逆光で、扉の前に立つ人物の顔は見えない。
 しかしそのシルエットは見慣れたコムイのものではなく、雪は微かに眉を潜めた。

 コツコツと独房の中に入り込んで来るのは、一人だけではなかった。
 しかしその人影の誰もが見慣れぬもの。


「お久しぶりですね。と言っておきましょうか」


 最初に踏み込んできた人影が投げかけてくる。
 その声は聞き覚えのあるもので、雪は耳を疑った。
 それは教団にはいないはずの、予想していなかった者の声だったからだ。


「……ぇ…」


 驚きと困惑の顔でその場に佇む雪の目に、独房の中の蝋燭が照らし出す顔が映り込む。
 細く鋭い眼孔に、綺麗に短く刈られた髪と鼻の下の髭。
 高級そうなスーツに身を包み、姿勢正しく立つその者は一度見掛けたら忘れられない人物。


「ルベリエ…長官…」


 中央庁の幹部、マルコム=C=ルベリエだった。


「月城雪。貴女の身柄は、現時点より私が預からせて頂くこととなりました」


 丁寧な言葉遣いで、しかし淡々と冷たさも感じる声色で伝えてくる。
 言葉の圧と、唐突な受け入れ難い現実を前に、今度こそ雪は言葉を失った。


(何…どういう、こと?)


 一瞬頭が混乱して、上手く状況を呑み込めない。


「今後は私の命に従って頂きます。室長の言葉は二の次です」


 "室長"

 その名に雪は、その場に望んだ人物が見当たらないことに気付いた。


「室長…コムイ室長、は…何処に…?」

「彼は今は別件の問題につきっきりでしてね。手が離せないのですよ」

「別件…?」


 コムイはルベリエが近々教団に訪れるだろうと言っていた。
 彼は自分のようにはいかない、そして彼の言葉には自分も従う他ない、と。

 その最悪の状況に陥ってしまったということなのだろうか。
 唐突な混乱は中々整理できず、雪は尚も現状を呑み込めずにいた。

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