My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「いくら夢の中だからって色々やり過ぎでしょ…ッ」
「あ、そっか。夢なら寧ろカウントされないんじゃね」
「え。」
雪の言葉に、寧ろ好都合だとぽんと手を打つティキ。
そんな彼の姿に、嫌な予感がすると雪の背中に寒気が走った。
「濃いーのでも一発ヤっとけば雪も俺のこと憶え」
「憶えてる憶えてる! 憶えてるから! というかなんか色々卑猥なんですけど!」
案の定、嫌な予感は当たってしまった。
腰を両手で抱いて再び遠慮なく顔を寄せるティキを、慌てて押し返す。
「大丈夫だって、俺下手じゃないから。蕩けさせる自信はある」
「何が!? なんの話!? そんなもの求めてませんけど!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
「私が大丈夫じゃない…ッ!」
必死に両手で体を押し返すも、ティキとの間に力の差はあるらしく。ぐぐぐ、と近付く顔に唇が擦れ擦れに迫る。
止められないと悟った雪が、ぎゅっと反射的に強く目を瞑る。
そんな顔を前にして、ティキは口元を綻ばせた。
ちゅ、とリップ音を立てて軽く唇で触れたのは、強く瞑られた瞼の上。
「…っ…?」
それ以上は触れない体温に、恐る恐る雪の目が開く。
目の前に映し出されたのは、微かに笑うティキの顔。
「濃いーのやって忘れられるとショックだしなー。今日はここまでにするわ」
「……」
その笑顔は少しだけ哀愁のようなものが感じられて、雪は荒げるつもりだった声を呑み込んだ。
(なんか……調子狂う)
飄々とからかってくる性格は相変わらずなのに、時折それとは違う目を惹く表情を見せるから。それ以上は強く何も言えなくなってしまった。
忘れられる身にもなれ、と彼は言っていた。
確かに、自分という存在を忘れられるなんて悲しいことだろう。
それが特別な相手なら尚更。